ハイアマからプロへ
日本屈指のキーボーディストにして鉄オタ(褒め言葉である、もちろん)、向谷実氏が、家庭用トレインシミュレーターの枠を飛び越えて、とうとう鉄道会社に納入するまでイってしまったそうだ。
病膏肓に入る、ってコトか? いや、これじゃなんだか悪い意味だな。でも、とにかくすごい。
2006年02月22日11時38分
日本を代表するフュージョンバンド「カシオペア」のキーボード奏者向谷(むかいや)実さん(49)は、音楽活動の傍ら、列車を模擬運転する家庭用ゲームソフトの制作会社を経営してきた。その技術の高さは鉄道会社も認めるほど。東京急行電鉄(本社・東京都渋谷区)が教習所で運転士を養成する模擬運転ソフトの注文を受け、このほど納品を済ませた。
中学時代からSLの「追っかけ」をしていたという向谷さんは77年にカシオペアを結成、79年にデビュー。発表したアルバムは約40枚に及ぶ。
家庭用模擬運転ソフトの第1作は95年の「中央線201系」。シンセサイザーで様々な音色を作り、そのデータの整理や編集にパソコンを使っているとき、ふと運転台の風景が頭に浮かんだ。「音楽も映像も同じデータ。模擬運転ソフトは、作曲の延長という感じだった」と振り返る。
企画やシナリオなど骨格部分を向谷さんが考え、自らが設立した会社「音楽館」のスタッフがプログラムなどを担当。以来、東海道線、阪神電気鉄道など、計28タイトルを制作した。「本物らしさ」にこだわり、実際に運行している列車にカメラを据え付けて撮影。車輪とレールの摩擦音や、速度で変化するモーター音も録音し、再現した。
東急に納めたのは、田園都市線(渋谷~中央林間)の模擬運転ソフト。東急では、関連会社が20年以上前に制作したソフトを更新するにあたり、リアルな実写版を求める声が強く出た。路線の風景や線路状況などを覚えるためだ。だが、関連会社が現在得意とするのはコンピューター・グラフィックス(CG)版で、実写版だとコストがかかる。「ではゲームソフトのあの会社に頼んだら」という案が、職員の間で浮かんだ。
向谷さんは、プロ向けだけにハイビジョンで撮影、実写にCGも合成し、雨や霧など天候の変化も経験できるようにした。「列車の運転は、ピタリと停止位置に止める職人芸の世界。そんな人たちの訓練をサポートできるなんて、こんな名誉はない」と話す。
ゲームアナリストの平林久和さんは「音楽館はゲーム性より運転感覚の再現を狙ったソフトを作ってきており、技術水準は高い。列車の模擬運転ソフトでゲーム会社がプロ用を制作するのは、おそらく日本で初めてだろう」と話している。
かなり以前、北海道ローカルの深夜のコンピューター番組に結構頻繁に向谷さんが出演されていた事があった。そこでは、新作のJR北海道のトレインシミュレーターのPRもしていた。あとはほとんどオボロゲなのだが、電車と気動車が連結して総括制御するのはここだけ、とか、その音の違いを楽しんでくれ、なんてディープなことを話していた、ように記憶している。
自らの「好き」をここまで他人を楽しませるレベルに持っていける向谷さんって、すげー人だなー、なんて感じた事も思い出す。
で、タモリ倶楽部でも鉄道関係になるとほぼ必ず出演され、やはりディープなネタを繰り広げて笑いに変えるのだ。
向谷さんはどこまでこの「鉄の道」を突き進み、新たな世界を垣間見せてくれるのだろう。幼い頃と比べると、相当「鉄分」が抜けた私であっても、興味は尽きない。
最近のコメント