毎日かあさん を観てきた

まず最初に書いておきたいのは、私は「サイバラ」さん、「カモシダ」さんという存在をほぼ、というか、全く知らないってこと。ある時ある所で、漫画家さんとアル中の元戦場カメラマン、という夫婦だった、ってことまでは知ったが、それ以上の情報は知らなかった。敢えてそういう予備知識を仕入れなかった、ということもあるかな。

実際、映画の中で出てくるアニメキャラの顔などで、ああ、この絵を描くのがサイバラさんか、なんて知った位にして。

じゃぁ、なんでそんな映画を観に行った？ ふむ、カモシダ役の永瀬正敏さんが役作りのために激痩せしたって報道で興味を持った事が一つ、あとは、以前マイミクのさくらさんから借りた吾妻ひでおの本でアルコール依存症に関しての知識をちょびっとでも仕入れて、その知識が実際にどんなもんなのかを確かめたかった、ってのが二つ。

だからここでは粗筋やネタバレ的な事は書かない。
いや、書くかもしれない(笑)。そういうのが嫌んな人はここでＵターンしてください。とりあえず、空白は開けておくか。

じゃ始めようか。
アルコール依存症でカモシダが壊れて行く様を見るのは正直、怖かった。ＣＩＡが見張っている、なんて妄想に取りつかれてしまったり、夜中に暴れたりする様などはすごく狂気じみていて、観るのも辛かったし、料理を作ると言って手にした「みりん」でアルコール依存症に逆戻り、なんて様は、スクリーンの中に飛び込んで行って、カモシダをしっかり抱きしめて「やめろー」って叫びたかったもの。

アルコール依存症から抜け出す事ができたら今度はガンだって。それを演じるために永瀬さんは激痩せしたんだけど、その「ガン期」のカモシダの行動が切なくて辛くて悲しくて、そこからずっと涙流しっぱなしさ。

自分がここにいたという証を残したかったのかもしれない。そうじゃないかもしれない。けど、ひな祭りで家族と撮った写真とか、食事の光景とかをニコンで愛おしそうに撮っていくんだよ。夜中に玄関に置かれた子供や妻の靴の写真なんかも撮っていて、そういうシーンが一番印象的だった。日常のどうでもよい事がホントはどうでもよくない事だって気付いたって、もう時間は残っていなかったんだよね。

最後はカモシダだった物体を目の前にして泣くことしかできなかったサイバラを、２人の子供たちが一生懸命笑わそうとしているんだよ。

だからなんだ、私はその映画の半分の時間を泣きながら観ていた事になるんだよ。映画が終わってエンドロールも流れ切り、劇場の証明が灯って周りの人が立ち上がり出口に向かっていくんだけど、私はしばらくの間立つ事ができなかったもの。うつむいて流れる涙を止めようと思って頑張って、それでようやく立つ事ができたんだ。出口ではゴミを回収するお姉さんがいたけど、「ゴメンなさい、泣いちゃってどうしても立てなくて。待ってくれてどうもありがとう」なんて言ったかな。

だめだ、思い出したらまた涙が出てきたよ。
でもカモシダに感情移入できたってことは、ひょっとしたら私も･･･。あ、鬱か。正直、こんなに感情移入できるとは思っていなかった。けっ、作りもんだろ、どうせ、なんて考えもちょっとはあったけど、そういうのは全部涙となって流れていった。

うん、いい映画だったね。思いがけない、予想外の収穫だったよ。

ＰＳ
映画上映前のＣＭによれば、来月に札幌で能、狂言が観られるらしい。破格の1500円で。チェックしておきたいね。多分、訳が分からないうちに全てが終わると思うけど、それでも良いと思っているもん。

http://www.kyobun.org/etc/eventdetail.php?id=3079