このエアチェックテープの時代背景は、もう覚えちゃいない。ただ、やっぱりYMOを引きずって、YMOを核にして、それから3人のメンバーの人脈を手繰っていったらこうなった、という一例だと思う。ただ、今この音源を聞き返してみても、高橋鮎生 さんの選曲はやっぱり難解だった。
カセットケースの中に番組の紹介記事と番組表の切り抜きがあったので、それぞれをスキャンしたのだが、記事に書かれている曲名と番組表に書かれている曲名が微妙に違うのはどういう訳だ(^^;。
まぁイイや。
こういう難解だと思ったエアチェックテープをデジタル化したついでに、久しぶりに聞き起こしをしてみたのだが、やっぱりこれも難しい。鮎生さんが発する言葉は外国暮らしが長かったからなのか、外国語ベースのコトバはちゃんとした発音で、また日本語は、どう表現したらいいのか分からないような微妙なアクセントというか、そういう違いも感じられたりもした。
で、例によって例のごとく、話す人を色分けしてみた。
番組の進行役、田中美登里さんはこの色 。坂本龍一教授はこの色 。高橋鮎生さんはこの色 。
オープニングトーク
お二人はいくつ違いですか、歳が。
今いくつ?
今24ですね。
ぼくは33ですね。
じゃあ、10歳位違う。
ふんっ。(一同笑い)
しょうがないじゃないですか。
違いって、すごく感じる部分あります?
え? そんなに感じませんよ。むしろ鮎生くんの方が老けている部分があると思いますけど。
そうですか。
え、そんなこと言われちゃっていいんですか?
いやぁ、それに関しては何にも言えない(笑)。
何も言えない(笑)?
先輩とかそんな感じじゃなくて、同じ位って感じですか?
えっ、うーーーん。
先輩とは思っていないでしょ、別に。
そうですね(笑)。
お兄さん(笑)。
お兄さんって(苦笑)。
でも、そういうように振る舞うときがありますよ。
なんだそれ(笑)。
若い才能の脅威を感じたりしましたか。
いやいやいや、大丈夫です。私は大丈夫です。
出光 ミュージック・タイム、私と音楽の世界
あさり売り 浅き夢見し 日のほとり あさり売り 浅き夢見し 日のほとり
草も木も華やいでいる中で、そんな時の流れとは全く無関係にじっと立って あさり を売っている姿をときどき街角で見かけることがありますけれども、皆さまいかがお過ごしでしょうか。こんばんは、田中美登里です。
浅き夢見し、なんて古い言葉を再生させるつもりが、どうもその古さに負けている辺りが、作品を作るということは本当に難しい、聞くほどに楽なことではないようですね。
今夜の出光 ミュージック・タイム、お客様は、この時期眠ってはいられないとばかりに、時の流れを自分たちで作り出していらっしゃるようなお客様、二人おいでいただきました。坂本龍一さんと、それから今すっかり波に乗っている高橋鮎生さんです。こんばんは、ようこそいらっしゃいました。
こんばんは。
こんばんは。
坂本さんはこの番組、再び登場、ということなんですけれども。
ええ。どうせ、そうですよ(含笑)。33にもなれば、2回位は出てきますけれど。
でも初めてなんですよ、再び登場の方は。
おおお、すごいじゃないですか。
ええ、すごいです すごいです。
さっきの俳句は、田中さんがお作りになったんですか? 素晴らしいですね。
いえいえ、毎回ゲストの方に合わせてね、俳句を作ってもらっているんです。
ああ。そうですか。
ああ、合ってんですか。
そうですよ。
あさり売り?
はい。
鮎生さんは初めてなんですけれども、坂本さんと、なんかさっきもちょっと言ってましたけれども、なかなか、えー、先輩というか、言えない部分もあるという風な感じがしますが、今日はあの、はっきり色々言っていただいて、という感じでですね、最後まで楽しくいきたいと思いますが、えー今日はですね、教授 VS AYUOと題して綴ってみたいと思います。最後までごゆっくりお楽しみください。
出光 ミュージック・タイム、坂本龍一、高橋鮎生と音楽の世界、この番組は出光興産がお送りします。
えーと、今日はどうしてこのお二人が、坂本龍一さんと高橋鮎生さんが一緒に出てくださったかというとなかなか複雑なものもありますが、坂本さんが彼のアルバムのプロデュース、エグゼクティブ・プロデューサーって書いてありましたけれども、ちょっとまずね、紹介していただけますか?
そうですか。いやあのー、紹介ってったってねぇ。
ちょっと一言では難しい?
最初に会ったのってのはどこだったんですか?
そうですね。
ええ。
鮎生くんが日本に帰ってきて、その直後なんですけども。
それまではニューヨークにいた訳ですよね。
ええ、そうです。
それで、お父さんが高橋悠治 さんっていうんですけども、ぼくの尊敬している音楽家なんですけれども、彼の家に遊びに行ったときに、まぁ息子さんだから、当然いた訳です。それで、ロックのレコードが沢山あってね、すごいなー、なんて思っていたんだけど、お父さんも鮎生くんのレコードを聞いていたりしてましたね。なんかね、聞かせたりしてたでしょ?
まぁ、そうかな。
そんな驚くほど沢山持っていたですか?
そんな驚くほど持っていたかな?
いや、かなり・・・、当時は・・・、
いや、でも手に入らないようなレコードとか、
そう、珍しい・・・。
輸入盤っていうかな、それでヨーロッパのロックが中心で、ちょうどぼくも、友達なんかとそういうレコードを集めていたというか、よく聞いていた頃なんですよね、その頃。それで、ぼく達より全然詳しくてさ、珍しいの持ってるからね、少年が。
そうですよね、まだ9年前といったら。
じゃあ、今日はその辺で聞いていた中からお好きなアルバムを持ってきてくださったので、紹介してください。
えーと、まずイギリスに、例えば今最近よくサイケデリックとか言われてるんだけど、イギリスでそういう風に言われてたときに現れたバンドは、一つはピンク・フロイドで、ピンク・フロイドに前座にソフト・マシーンってバンドがやってて、あと色々スタディオ・バンド(?)とかそういうのがあったんだけども、えーと、ピンク・フロイドは皆さんもう知っているし、ソフト・マシーンのギターリストが抜けた、作ったバンドのレコードから紹介しようかなと思って、それはゴングというバンドです。曲は、ホワット・ドゥ・ユー・ウォントという曲です。
いずれにしても・・・、私好みの新鮮な音楽情報を仕入れるためのソースが乏しかったド田舎の中学生時代に、鮎生さん選曲の Gong の What Do You Want? はあまりに刺激が強過ぎた。YouTube でこの曲が9分以上の大作であることを知って、番組ではこの曲がフェードアウトしていったのも必然だったようにも感じる。初めて Kraftwerk を聴いたときのような、言いようのない難しさを感じたな。延々とこのフレーズが続くのかと思ったら、ボーカルが入ってきて安心できた、ってのが正直なところだな。
こういうレコードってずっと大切にとってあるんですか、やっぱり。
えー、そぉ で す ね。
今でも時々出して聴いたりとか。
んー、時々、そうですね。
当時持ってたの、全部持ってる?
いやー、あのー・・・
売っちゃった?
売ったりしたんじゃないかな。
あー、もったいないね。資料的価値もあったかもしれない、珍しいレコードだから。
今のは割と廃盤で、レコード屋で買えない。
買えないでしょうね。
鮎生さんはさ、住んだのはニューヨークが一番長い訳でしょう? あのー、どこに住むと一番落ち着く・・・、かなぁ?
どこに住むと一番落ち着くかなぁ?
東京は住み心地は良いですか?
えーーーー・・・、そうですね・・・・・・、んー、東京の場合って、・・・・・・最近できた街だからすごくあのー、えーと、自然の流れでできたものじゃないって印象がすごくありますね。で、あのー、例えば世界中から色んな情報がすぐに日本だと一番入り易くて、物凄く色んなものが進んでいる、テクノロジーが進んでいる、だけれど、全て新しいから土台ってのがあんまり感じられない。例えばニューヨークだと街歩いているだけで、あのー、ビルが古いっていうことだけでもすごく馴染めるっていうか、何か、そこの古さが染み込んでいくってことがある、ような感じがある。
あのー、同じようなことかもしれないけども、東京っていうのはね、日々変わっていくでしょ? だけど、その変わっていくスピードから比べると、ニューヨークにしても、それからもちろんパリやロンドンにしても、ほとんど微々たる変化しかなくてね。もちろん微細に見れば、アートの動向とかどんどん変わっていくんだけども、街の印象としては5年10年、そんなに変わんないよね。
だけど東京だと10年もいなかったら全然歩けないくらいにどんどん変わっていくでしょ。それはやはり今 鮎生くんが言ったみたいに東京ってのは、日本全体がそうなのかもしれないけども、一度文化的な、何て言うかな、土台って言うかな、伝統って言うかな、が切れてるでしょ。2回切れてる。明治維新で1回切れて、それから、第二次世界大戦が終わった時に1回切れて、2回も大きな、なんて言うかなぁ、土台を壊すようなことをしたから、非常に土台のない所にポンとテクノロジーで建てた街ですよね。
だから、それだから面白いって面と、だから内容が無いとかって面とあると思うんだけど、ぼくはどっちかと言うと面白いですね。一つの、世界中の中でも面白い実験だと思うんですよね。で昔、5、6年前にデビッド・ボウイと最初に会ったときもやはり東京の話になって、デビッドが東京のそういうニュアンスってのをよく理解していて、サイバーティック・シティだって言ってたのね。非常にサイバティカルに、一種の有機的なテクノロジカルなんだけど、それはそれで非常に面白い実験だと感じがするのね。だから、ぼくがフィールド・ワークって言葉を思いついたのも、そういうニュアンスなんですけども、そういうまた、プロモーション・ビデオを作っても面白いですよね。ぼくなりのね。
今度のアルバムを作るときにそういうこと色々考えたと思うんですけども、あのー、じゃ、その中から「サイレント・フィルム」の中から聞いてみましょう。えーと、フロム J.S.P. という曲を聞いてほしいということだったんですけども、はい。
あ、この曲は、フロム J.S.P. というのは、シルビア・プラスという詩人の日記から取られているものです。夜の列車をフランスをずっと通り抜けていく、恋人と一緒に、そして窓の外を見ると月が輝いていて、月が水に光っている、水に反映しているところとか、森の中とか、そこの中で感じているものを割と自然に感覚的に描いているものです。
フロム J.S.P. です。
フロム J.S.P. は YouTube ではヒットなし。
曲はアンビエントな感じの上に英語詩を朗読する女性、なんて感じで、なんだか意識をそっち方面に無理矢理に持っていかれそうな感じを受けたな。英語を聞き取って理解できるスキルがあれば、もっと言葉が表している情景を想像することもできるんだろうけど、その英語詩のところどころしか言葉を聞き取ることができない今の私には、それ以上の感想は何とも・・・。これをド田舎のびんぼう中学生が理解できるかな? レコードのライナーに訳詞が載っていたら、それで何とか理解できたのかもしれない。
んー、坂本さんはこれを聞いて、アルバムを聞いたときにどんなことを感じました?
そうだな・・・、あのー、音だけ聞いたんではね、彼が言っているような背景とか意味ってのが直接にはぼくには分からないので、今こうやって話したりね、書いたもの読んだりして「なるほど」っていう感じでね、非常に興味深いんですけど。
あのー、この「サイレント・フィルム」はニューヨークで録音されたということで、アメリカのミュージシャンと一緒になさった訳だけれども、日本で一緒に演奏してみたいミュージシャンっていうと、この前もビデオの仕事をなさったみたいだけれども、これからどんなことを考えてますか?
近藤達郎 さんのことですね? 彼は今「ウニタ・ミニマ」ってバンドをやってまして、「ウニタ・ミニマ」ってのはイタリー語でユニットですね、ミニマル・ユニットですね。つまり、最小限のユニットという意味です。それで、一番例えば、最小限の形が何ができるかっていうことが、割と見えてるんです。例えば、「ウニタ・ミニマ」だと、よくライブハウスだとピアノやプロフェ・・・、DX-7 のシンセサイザーを一杯揃えてやってるときと、あるいはトイピアノと小さいボンゴだけでやってるときと色々あるんだけど、そこの中でもまるきり同じ世界が現れてくるんです。
楽器の違いじゃなくてね。
そうか。バロック的というかバロック以前の・・・
割と音楽の一番根本的なところに、・・・あのー、うん。
それでその近藤くんの、これはバンドって言っていいの?
ええ、二人のバンドです。近藤達郎がキーボードで、れいち がドラムスです。
あ、れいち がやってるのか。ああ、そうですか。なんかあの、如月小春 さんの芝居の音楽をやったりとかしている。
そう、近藤くんもそう。「ノイズ」の音楽やっている人だね。
じゃ、曲名がまだ決まっていない・・・
という曲なんですね。聞いてみましょう。
♪(男声)このままじゃ嫌だ~ (女声)今のままがいい~ (男声)ここにずっといよう~ (女声)どこかへ行きたい~ (男声)何もないところ~ (女声)何かがあるところ~ (男声)誰も彼もが~ (女声)踊っているところ~(?) (男声)(女声)どこへ行くの~ 何をするの~ いつ帰るの~ (男声)犬があくびする~ (女声)お母さんがしゃべる~ (男声)お父さんが怒る~ (女声)テレビが火を噴く~ (男声)ゴキブリが逃げる~ (女声)地下鉄が走る~ (男声)爆弾が落ちる~ (女声)みんな忙しい~ (男声)(女声)どこにいるの~ 何してるの~ ここへおいで~ ぱっぱらぱっぱっぱっぱっぱ~ ぱっぱらっぱぱっぱっぱ ぱ~ら~ ぱっぱらぱっぱっぱっぱっぱ~ ぱっぱらっぱぱっぱっぱ ぱ~ら~ (男声)いつでも~ どこでも~ 世界は~ 大騒ぎ~
てな感じの歌なんだけど、タイトルはもう付いているのかな? それらしい語句、歌詞を検索してもすっきりしなかったんだよなぁ。
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