続けることは変わり続けることなのかしら?
先日、多分当地札幌で最も先鋭的で前衛的で実験的なプロモーターからメールが届いた。内容は、イギリス出身のサックス奏者、イアン・バラミーとノルウェー出身のドラマー、トーマス・ストレーネン、その二人組の「FOOD」にエレクトロニクスを操って夢幻の音世界を響かせるクリスチャン・フェネスと、ヒカシューの巻上公一さんが加わって、まぁ、40人入れば一杯一杯と思われる、半地下のライブ&バーでライブをするという。日付は11月16日の土曜日夜。
BASS NINJA こと今沢カゲロウさんを知ったのもこのプロモーターが企画したからだし、今をときめく大友良英さんのライブを見たのもこのプロモーターがあってこそ。だけど・・・、その時の大友さんのステージは大変にノイジーで、難解だった。それから考えると、NHK の連続テレビ小説の音楽を手掛けたのを知ったときは、本当に本人なのか? 別人なんじゃないのか、なんて思ったくらいにして。
まぁ、本来なら、何事にも優先したいイベントで是非にその空間でしか味わえない音を浴びてきたかったのだが、シゴトだった。休もうかとも思ったが、勤務態度がよろしくない私が休みを申請しても、何か嫌な顔をされそうなので涙を飲んで諦めた。まぁ、チケット代を払うにはちと懐具合が寒かったせいもある。
で、その翌日の11月17日日曜日の午後2時から、巻上公一さんと坂出雅海さんによる、「ヒカシュー/ロシア、リトアニアツアー2012 報告会」なるトークイベントが行われ、その入場料がさほど高くもなかったので行ってきたのだ。
って言うか、ヒカシューってまだ続いていたのか、と正直驚いた。
1980年代初頭からテクノポップバンドとして活動していたヒカシューだけど、一度来札したヒカシューを見たときは、テクノポップじゃないなぁ、と思ったものだった。そして、それが大体20年ほど前のことだ。その時の動員があまりよろしくなかったため、札幌からお呼びがかかることがなかった、なんてことも巻上さんは仰っていたな。
そして、巻上さんはテルミンにおいては屈指のプレイヤーとしても知られるとその届いたメールにあったので、その演奏の光景も見ることができるかな、と期待していた。
して、東ヨーロッパでのライブの模様が、これが何とも凄い。
モスクワの地下鉄の駅は、それ自体が芸術品のような作りで、行く機会があったら是非地下鉄に乗ってほしい、や、ライブの最中に関係者が撮影しているカメラの前を、ロシアのMTVのカメラマンが「そんなこと知ったことか」とばかりにステージ上に上り込み、ギタリストをデカいケツで押しのけて撮影していたり。その映像が何とも滑稽で、いざ放送されてみると、きゃりーぱにゅぱにゅ や なんかのガールズユニット、そして巻上さんが(ロシア由来の)テルミンの使い手であることから、レフ・テルミン博士の映像なども挟み込んで、どうも、日本の最先端の音楽だ、なんて感じで伝えられたらしい。
その他、ヒカシューのメンバーがサウンドチェックをしている最中のステージの真ん中に「ここに椅子を置いていいか」とタイバンの謎の人物が言ってきたそうで、それを断ったらその謎の人物のパフォーマンスが、何とも怪しげで、そしてつまらなかった。フードで顔を隠し、テープエコーを使ったパフォーマンスだったのだが、多分、その報告会に参加して映像を見ていた人も、頭の上に「?」が浮かんでいたと思う。
でもって、現在のヒカシューの音楽性は、どうもフリージャズの方向のようで。シンセサイザーなし。鍵盤楽器は本当の生ピアノだったり、エレクトリックピアノだったり。
そういう音楽性で世界を飛び回っていたら、どこのフェスでも大盛況なのだそうで。だけど、日本のメディアはそういったことを全く知らせていない。サックス奏者の坂田明さんの言葉によれば、日本はブラックホールだと。吸い込むだけ吸い込んで、吐き出さない。坂田さんやヒカシューのように、世界を股にかけている人達のことは、誰も知らない。だから僕たちは札幌に布石を打ちに来た、とか何とか。北海道はロシアに近いでしょ、ってヲイヲイ(^^;。
当地のロックフェス、ライジング・サン・ロック・フェスティバルも出たかったようだけど、断られた、なんていうことも言っていたっけ。
いやぁ、久々に面白いものを体験できた。帰り際に巻上さんに、ヒマな時に音を出して遊んでいる学研のテルミンミニをお見せして、「自分で弾いている光景をカメラで撮って見返したら、なんの曲なのかさっぱり分からなかったんです」なんてことをお話しして、会場を出た。
あ、そうそう。
巻上さんのライブ映像でのテルミンは、ホントに「声」だった。巻上さんが発する「奇声」なのか灯ったらテルミンだったり、テルミンかと思ったら巻上さんの声だったり ね。
PS
そのプロモーターから緊急のメールが来て、クリスチャン・フェネスが来日直前に事故に遭い、ウィーンの病院で検査中だとのこと。機会があればその夢幻の音世界を感じてみたいな。
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