【Digital】育ちがいいんだろうなぁ【Archives】幸せの骨頂 / 清水ミチコ
当初はこのテープを MP3 化するつもりはなかった。しかし、「どんなネタが入っていたっけ?」を聞いてしまったのが運の尽き。ぐいぐいと1987年当時の清水ミチコワールドに引き込まれ、27年経っても変わらない面白さに圧倒されてしまった。
私は音楽と関係のあるギャグ、コミックソングが好きで、そのきっかけは多分、中学時代に友人に借りた変なオムニバステープにYMOの25センチアルバム「増殖」に収録されていたスネークマンショーの「ここは警察じゃないよ」が入っていたからだと思う。
もちろんその当時は、そのギャグが誰のものなのかが分からず、ただその友人と「だぁれぇ?」「警察だ。ここを開けるんだ。お前を逮捕する」「警察はここじゃないよぉ」とじゃれあっていたのだが、後々のスネークマンショーのアルバム「スネークマンショー」で「はい、菊池です」や、「盗聴エディ3部作」、それから先述の「増殖」に収録されていた「NICE AGE」が、ポール・マッカートニーの大麻不法所持の現行犯逮捕に深く関わっていたとは、その当時は全く知らなかった。
・・・・・・相当激しく脱線したな。
1987年。高校2年生。その当時清水ミチコという存在を知っていたかどうかは怪しい。テレビで見たのか、それとも、やっぱりFM情報誌のレビューによるもので、レンタル屋にあったら借りようと唾をつけていたのか。その当時、レンタル屋で借りてきたLP、CDの録音にTDKのSAというハイポジションテープを使っていたのは、後々にも良い音で聞きたいという気持ちの表れだったのか。
という訳で、清水ミチコさんの「幸せの骨頂」なのだが、これはさほど大きくないライブハウスでの一発録り、という印象を持った。清水さんとオーディエンスの拍手の音がかなり近い。そして、圧巻というか、現代でも十分に通じるように思えるネタが、「音楽講座・オン・ピアノ - ネコ踏んじゃったパロディ」「富士山爆発」「やな六人」「十年前の矢野顕子」あたりになるのかなぁ。
「ネコ踏んじゃった」は、まず普通の「ネコ踏んじゃった」、そして、松田聖子の「ミケ踏んじゃった」、五輪真弓の「化け猫」、ノイローゼ気味の松任谷由実の「イリオモテが死んだ朝に」、うーん、これはネコ踏んじゃった原曲のイメージが全くないような気もするんだけど、まぁ、それはそれで。そして、モーツァルトやベートーベンというクラシック界の大御所、あとはキース・ジャレットがどう弾くか、また、これまではカール・ルイスと呼んでいた物が、これからはベン・ジョンソンが弾いたらで、曲名が「9秒83」なんてネタに展開していくのだが、どれを取っても「ありそうだな」と思えるところが凄い。流石に世界的な陸上選手がピアノと向き合うというのはあまりなさそうだとは思ったけど。
松田聖子の「ミケ踏んじゃった」は、普通のネコ踏んじゃったよりもオクターブが高かった。
五輪真弓の「化け猫」は、冒頭に「恋人よ」が来て、それからは転調っていうのかな、非常に暗いネコ踏んじゃったが続き、最後には葬送行進曲、ときた。
ノイローゼ気味の松任谷由実の「イリオモテが死んだ朝に」は・・・、清水ミチコさんによる松任谷由実の歌真似で、実際にありそうな気分にさせられた。
そして、モーツァルトのネコ踏んじゃったは、なんか明るく、キラキラしている感じを受け、落ちに「アイネ・クライト・ナハトムジーク」が来た。対しベートーベンは、何というか、激情を鍵盤に叩き付けるかのような力強さと「これでもか」というしつこさ、なんて感じも受けた、おヤクソクの「運命」のフレーズも入ってきたりして、ま、やっぱりありそうだな、と。
キース・ジャレットに関しては全く知識がないため、「こうだ」と言われたら「そうなの」と答えざるを得ない。
カール・ルイスからベン・ジョンソンの「9秒83」は、大体想像がつくと思うし、多分今だった、ウサイン・ボルトになりそう。これは、ネコ踏んじゃったのフレーズ、印象を残しながら猛烈な速弾きだった。
「富士山爆発」は、おそらくヘリ搭乗でのレポートの再現だと思うんだけど、その効果音が電動鉛筆削りだったり。
「やな六人」は、楠田恵理子の物まねをオーバーダビングして「帰ってきた楠田枝里子」「楠田枝里子セブン」「楠田枝里子ゾフィー」「楠田枝里子タロウ」「楠田枝里子の母」「楠田枝里子の父」とやり「ロボットという古いタイプではない。せめてレプリカントとでも呼んでください」と畳み込んでくるという。
「十年前の矢野顕子」は、今現在の矢野顕子でも同じなんじゃなかろうか。矢野顕子さんが「あんたがたどこさ」と「ひょっこりひょうたん島」を歌うとこんな感じになるんじゃないか、とホントに強い説得力を持って迫ってきた。
01 清水ミチコ - オープニング・アナウンス
02 清水ミチコ - I Feel Sad
03 清水ミチコ - 慰問の女
04 清水ミチコ - 放送特別音楽講座
05 清水ミチコ - 音楽講座・オン・ピアノ - ネコ踏んじゃったパロディ
06 清水ミチコ - 柴山ビニール
07 清水ミチコ - 渡米するあなたに
08 清水ミチコ - ウィ・セシボン
09 清水ミチコ - 世界のくしゃみ
10 清水ミチコ - カメヤマ美容室
11 清水ミチコ - ピアノであそぼう - ドのジャズ ~ オーメン
12 清水ミチコ - 富士山爆発
13 清水ミチコ - 寿し屋の注文
14 清水ミチコ - アルプス一万尺
15 清水ミチコ - 二人の比較
16 清水ミチコ - 謎の中華三昧
17 清水ミチコ - オーシャンゼリゼ
18 清水ミチコ - 五人の港
19 清水ミチコ - いたわり
20 清水ミチコ - やな六人21 清水ミチコ - 2x3=6
22 清水ミチコ - ドレミのうた
23 清水ミチコ - その後の寿し屋
24 清水ミチコ - 十年前の矢野顕子
25 清水ミチコ - Lover Comeback To Me
このカセットケースの背には、アルファベットのテンプレートを使って「SHIAWASE NO KOCCHO / MICHIKO SHIMIZU」と書かれていたし、そのテープの内容も覚えているつもりだった。が、改めて聞き直してみると、覚えていたはずのネタにもかかわらず、笑うことができた。これはこれで結構有意義な時間だったような気も、する。
そして、清水ミチコという人は、品と育ちが良く、頭の回転が速く、「ボール」を投げたら思った以上の大ホームランを打ってくれそう、そんな気がする。
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